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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

春のけはい

一

春のけはい

一

この世に――この日の本に生れてきた自分の使命が何であるかを、範宴は自覚した。

同時に、

(自分は二十歳にして死んだものである)という観念の下から新しく生れかわった。

この二つの信念は、磯長の廟に籠った賜物であった。聖徳太子からささやかれた霊示であると彼は感激にみちて思う。けれど、

(では一体、自分は何をもって、その重い使命を果すか)となると、彼はまた混沌たる迷いの子になった。

太子廟の壁文には、

――日域は大乗相応の地、あきらかに聴けわが教令を。

とあった。けれどもそれは暗示であり、提案である、「わが教令を聴け」といわれても、太子のふまれた足蹟はあまりに偉大であり、あまりに模糊としている。

「――聴く耳がなければ」と範宴は新しくもだえた。

「聴ける耳がほしい」迷える彼は、それからいずこともなく二年のあいだをさまよいあるいた。

東大寺の光円を訪れ、唐招提寺をたたき、そのほか、法燈のあるところといえば、嶮しさに怯まず、遠きに倦まず、雨や風に打たれても尋ねて行った。

けれど、彼の求める真理の鍵はなかった。太子がひろめられた教令のかたちはあっても、いつか、真理のたましいはどこにも失われていた。