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しんらん
親鸞
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁
川霧
一
「なぜですか」
「自然に、お目にかかる折もあろう。ご孝養をたのむぞ」すげなく、行きすぎると、
「兄上――。どうして、養父上に、会わないのですか」朝麿は、恨むように、兄の手へ縋った。女は、池のふちから、じっとそれを見ていた。処女心は、自分への男の愛を、ふいに、他人へ奪られたような憂いをもって、見ているのだった。
「…………」性善坊は、すこし、傍へ避けて、兄弟の姿から眼をそむけながら、ぽろぽろと、頬をながれるものを、忙しげに、手の甲でこすっていたが、そのうちに、範宴は、何を思ったか、不意に、弟の手を払って、後も見ずに、走ってしまった。
川霧
一
ちらと、彼方に灯が見えた。町の灯である。
生紙へ墨を落したように町も灯も山も滲んでいた。
「宇治だの」範宴は立ちどまった。足の下を迅い水音が聞える。やっと、黄昏れに迫って、この宇治川の大橋へかかったのであった。
「さようでございまする。――もういくらもございますまい」云い合わしたように、性善坊も、橋の中ほどまで来ると、欄に身を倚せかけて、一憩みした。
ひろい薄暮の視野を、淙々と、秋の水の清冽が駈けてゆく。範宴は冷ややかな川の気に顔を吹かれながら、