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しんらん
親鸞
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁
乱国篇
第一の声
一
月の世界に兎がいるとしていた時代には、事実、月の世界に兎が見えていたのであるから、それらの奇蹟伝説も、かつては一価値のものであったにはちがいないが、現代人にはそのままうけ入れられるはずもない。当然、わたくしの小説構成の上ではそうした既成構造がかなり変更され、また敢て無視した箇所もあり、創意も加えられてあることを憚りなくいっておく。そしてただ著者の惧れるのは、旧著の不備と、菲才にして懶惰、まだ十年の約を果していない罪とである。ふかくお詫びするのほかはない。
昭和二三・初冬 吉野村菴にて
著者
乱国篇
第一の声
一
朱雀の辻に、鈴を鳴らして、今朝から、喚いている男があった。
蜂にでもさされたのか、陽にやけた顔が、腐った柘榴みたいに凸凹にゆがんでいる。大きな鼻と、強情らしい唇を持ち、栗のイガみたいに、ぼうぼうと伸びた坊主頭には、白い埃がたかっていた。
年ごろは、そんな風なので、見当がつかない。三十とも見えるし、四十かとも思われる。身は、やぶれ衣に、縄の帯一つ。そして、沓よりは丈夫らしい素裸足で、ぬっと、大地から生えているというかたちである。
りいん! りいん! 振り鳴らす鈴の音も、凡な力ではないのだった。