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しんらん
親鸞
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁
五
「しいッ……しい」と呶鳴る馬方の濁す声が、はるか谷の下の加茂部へ行く道の辺でひびいた。
そこは、また、石岡へ出る道路でもある。当然、そこへも万一を慮かって、逆茂木を仕掛けておいたはずであるのに――
「しまった!」と、樹の上から谷街道のほうを見下ろして、一人があわてて叫んだ。
「ばかな奴、あれは石岡へ炭を積んで出る荷駄馬だ。落し穽へ落ちた馬を、大汗掻いて引き出しておるわ。こっちで仕掛けた逆茂木を滅茶滅茶にしてしまいおった」
「忌々しい馬子め」
「血祭を与えろ」
ピュッ――と誰かの手から弦唸りを切って毒矢が飛んだ。けたたましい馬の悲鳴が、ふたたび谷間に谺して、腹に矢を突き立てた馬は渓流の中へ飛びこんで、渓水を真っ赤にした。
馬子は驚いた様子で、盲走りに、向側の絶壁へかじりついた。見ていると、そこにも杣道があるらしく、馬子の姿は、たちまち見えなくなった。弁円は、歯がみをして、
「察するところ親鸞と生信房のふたりは、どこか、俺たちの気づかぬ間道を廻ったと見えるぞ。それっ、手わけをして、谷の下、峰の上、八方の細道をさがして引っ捕えろ」
猟人のように、山伏たちは、熊笹や木の中へ飛びこんだ。