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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

五

五

「いや、問題は範宴少納言を、登岳させたというだけではない」朱王房は、語気をつよめて、

「――それだけなら、何もたいして、騒ぐこともないが、近ごろ、チラと聞くところによると、座主は、何と心得ているのか、あのわずか十歳の稚僧に、授戒入壇の式を、許されるという噂なのだ」

「はははは」学僧たちは、一笑に附して、

「そんな、馬鹿げた話が、あるものか。それや、朱王房の聞きちがえだろう」

「なに、たしかなことだ」

「うそだよ」

「ほんとだ!」笑い去ってしまうには、あまりに、彼の顔つきは、真顔だった。

「誰に聞いた」

「中堂の執務から――」

「何日」

「近いうちに、授戒入壇をさせるからと、支度を命じられたという」

「はてな?」解せない顔つきで、人々は、小首をかしげたが、

「朱王房、よもや、嘘ではあるまいな」

「誰が、こんな嘘をいうか」

「事実とすれば、言語道断だぞ」

「怪しからぬ儀だ」

「私情というほかはない」

「法規の蹂躙だ」学僧たちは、不平と、公憤に、熱して、怒りをおびた。

「まだ、十歳や十一の小童を、山へ連れ登られたことさえ、奇怪であるのに、ものものしい入壇授戒を、あの洟っ垂れの稚僧に、ゆるすとあれば、すこし、狂気の沙汰である」