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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

三

三

住蓮は、ことばを続けて、

「この峰づたいに――どこまでもどこまでも――人里を避けて、西のほうへお逃げなさい。他宗の者や、田舎の役人などに気をつけて」おののいて、足も地につかないでいる松虫と鈴虫とへ、

「こうしている間に、捕吏が登ってくると、もう最期になります。私たちが、付いて行ってあげたいが、私たちは、これからなお、吉水の上人に、事の由を申しあげて、この禍いが他へ及ぼさぬようにしなければなりません」

安楽房も、急き立てて、

「さ、早くなされい。……なあに人界は追われても、到る所に、仏界はあります、浄土はあります」

「では……」と、転ぶようにふたりは細い杣道を攀じてゆく。

「気をつけて――」

「はい」

「……気をつけておいでなされよ。……松虫どの、鈴虫どの」

「住蓮様――安楽房様」

「おさらば」法勝寺を焼いている炎は、遠い眼の下に見えるが、吠えくるう風の音と火のハゼる音がそこまで聞えてきた。

峰の背へ――ふたりの影を見送って、

「住蓮」安楽房は、友の肩をつかんで、嗚咽しながら、

「法勝寺が焼ける」

「ム……ム……自分で放けてきた火だ。焼けたほうが潔い」

「みんなおれたちの火悪戯だった。