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しんらん
親鸞
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁
三
そうして今は何か一すじに求めんとするものへ向って、夜ごとにこの大乗院を出ては、朝になると帰ってくる彼であった。
「今夜こそ、そっと、お後を尾けて行ってみよう」尋有は、兄の行動を、半ばは信じ、半ばは世間のいう悪評にもひかれて、もしやという疑いをふと抱いた。
三
その晩、尋有は先に臥床を出て、大乗院の外に忍んでいた。
ぽつ――と冷たいものが頬にあたった。雨である。しかし、雲が明るい、綿のような雲が翔けている。
「降らねばよいが」夜ごとにこの闇を歩む兄の身を思いやって祈るのだった。
静かな跫音が今山門を出て行った。範宴である。勿論気づいているはずはない、尋有はその後から見え隠れに兄の影を追って行くのだった。
昼ですら危険の多い横川の谷間を、範宴は、闇を衝いて下って行く。なにか、赫々とした目的でもあるような足だ。むしろ尋有のほうが遅れがちなのである。
渓流にそって、道は白川へ展けている。そのころから風が変って、耳を奪うような北山颪に、大粒な雨がまじって、顔を打つ、衣を打つ。
すさまじい空になった。黒い雨雲がちぎれて飛ぶ間に、月の端が、不意に顔を出すかと思うと、一瞬にまたまっ暗になった。