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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

二

(もっと、よく見よ)

(遠いから、人は見えません)

(その人間の、生きる相、亡びる相、争う相、泣く相、栄える相、血みどろな相――。見えるか)

(そんなのは、見えるわけはありません)

(いけない。……それでは、何も見えることにはなりはしない。おまえは、世間にいれば、世間が見えてると思っているだろう)

(ええ)

(大違いだ。――魚は河に棲んでいるけれど、河の大きな相は見えないのだ。悠久な、大河の源と、果てとを見極めるには、魚の眼ではいけない)

(では、何の眼ですか)

(仏の眼)

(ここは、河の中ではありません)

(叡山は、河の外だよ)範宴は、なにか、うっすらと、教えをうけた。それからは、都の灯を見ても、恋しいと思わなかった。

二

短檠の丁字を剪って、範宴が、ふたたび、机の上の白氏文集へ眼を曝しはじめると、

「さ……水を汲んできた、足を洗いなさい」と、入口の方で、また、物音と人の気配がした。やはり、狐狸ではなかった。

範宴は、すこし、燭の位置を移して、うしろへ身をのばしながら、

「性善坊か」すると、はっきり、

「ただ今帰りました」彼の返辞であった。すぐ上がってきて、

「範宴さま。ただいま、戻ってくる途中で、ふしぎな人に会いました。