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しんらん
親鸞
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁
五
洛内のどこかへ、急な用でもいいつけられて行ってきた帰りか、それは、天城四郎の手下のうちでも、一目でわかる例の蜘蛛太。
河鹿が跳ぶように、石から石へと、白河の流れを、足も濡らさずに渡り越えて、神楽岡をのぼりかけたが、
「おや?」と、立ちどまって耳をたてている――
「琵琶の音がするぜ。はてな、こんな所に邸はなし……」ふと見下ろすと、赤松の林の中に、ポチとかすかな灯があった。琵琶の上手下手を聞きわける耳のない蜘蛛太も、足をしばられたように聴き恍れていた。
「誰だろう?」好奇心も手伝って、――またその妙な音色にも釣られて――蜘蛛太は坂の途中から熊笹の崖を降りていた。
やがて出るや秋の夜の
秋の夜の
月毛の駒よ心して
雲井にかけた時の間も
急ぐ心の行衛かな
秋や恨むる恋のうき
何をかくねる女郎花
我もうき世のさがの身ぞ
人に語るな
この有様も恥かしや
「小督だな」平曲はちかごろ流行っているので蜘蛛太にも、それだけわかった。
忍び足して、裏の水屋の隙間からのぞいてみた。ぬるい煙が顔を撫でる。炉ばたには黙然と首をうなだれて聞き入っている人があるし、一人はやや離れて琵琶を弾じている。主客ともに四絃の発しる音に魂を溶けこませて、何もかも忘れているらしい姿が火に赤々と映し出されている。