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しんらん
親鸞
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁
四
「法然様のお話だけでも聞いて行こうではありませんか」
「そうね……」気のすすまない顔つきで、鈴虫は、それだけを、待っていた。
(早くやめないかしら)と思っている念仏の唱和は、それからも、足のしびれるほど永くつづいた。初めのうちは、彼女たちは、軽い悔いばかり考えて、
(来なければよかった)と思っていたが、そのうちに、前の人も、後ろの人も、また隣の者も、およそこの御堂にいる人々のすべてが、ほとんど一つ人格になりきって、なむあみだぶつの称えをくりかえしているので、鈴虫もいつの間にか、
(な、む、あ、み、だ、ぶつ)そう口のうちで、少し、きまりの悪いような怯みを抱きながらつぶやいていると、松虫も、それを真似て、
「な、む、あ、み……」と、いいかけて、俯向いて、ちょっと笑った。
――でも、たとえ、戯れにでも――何か口につぶやいていないと、まわりの人々に対して、異分子のように自分たちの存在が感じられるので、
(笑ってはだめ)と、叱りあうような眼をそっと交わしながら――
「南、無、阿、弥、陀、仏」
「南、無、阿、弥、陀、仏……」と、となえていた。
初めは、何となく、舌にもつれて、不自然にしか出なかった称名が、いつのまにか、鈴虫も松虫も、自然にくりかえされていた。