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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

二

――同時に、おれたちの生活も、今は、感謝と輝きに充ちきったものだ」

「こういう、憂いなき、安らかな感謝の一日一日を、どうかして、今の昏迷な埃の中にある実社会の人々たちへも、知らしめたい、頒けてやりたい。――おれはそればかりを思う」

「吉水の上人が、あの老躯をひっさげて、自身のご病気もわすれてなお、法のために、一日一日をおやみもなく遊ばしていらっしゃるお気持も、その願望にほかならない」

「上人のことを思えば、われわれはまだ安閑としていすぎるかも知れぬ」

「榾に暖まっているのも何か勿体ない気がするのう」

「励もう」

「ム。人を救うには、まずみずからをだ。――もすこしおれは勉強する」住蓮が、また、書物を取り初めたので、安楽房も立って、暗い壇のまえに坐って、念仏の三昧に入った。

パチパチと、炉の火がハゼる音だけが聞えた。時折、雨戸のふくらむような峰の風がぶつかってくるが、それの過ぎた一瞬は、死界のような静寂に返ってしまう。

ふと住蓮は眼をあげ、

「――安楽房」と、呼んだ。

「お。何か?」

「御本堂のほうの戸を誰かたたいておりはせぬか」

「そうか」耳を澄ましていたが、やがて笑って、