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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

七

で、あくる日あらためて覚明は範宴のまえに出た。

「お願いがござるが」範宴はやわらかい眼ざしを向ける。この処女のような眸のどこにきのう講堂で吐いたような大胆な、そして強い信念がかくされているのかと覚明はあやしくさえ思う。

「拙者を、今日から、御弟子の端に加えていただきたいのですが――」

「弟子に」

「されば」覚明は力をこめていった。

「今日までの自分というものは、昨夜も申しあげたとおり、武辺の敗亡者であり、生きる信念を欠いた自己のもてあましたものでありましたが、もういちど、人間として真に生き直ってみたいのでござる。おききとどけ下さらば、覚明は、今日をもって、誕生の一歳とおもい、お師の驥尾に附いて、大願の道へあゆみたいと存ずるのでござる」

「あなたは、すでに、勧学院の文章博士とし、学識も世事の体験も、この範宴よりは遥かに積まれている先輩です。――私がおそるるのはその学問です。あなた、今までのすべてを――学問も智慧も武力も――一切かなぐりすてて、まこと今日誕生した一歳の嬰児となることができますかの」

「できる。――できるつもりです」

「それをお誓いあるならば、不肖ですが、範宴は、一歳のあなたよりは、何歳かの長上ですからお導きいたしてもよいが」