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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

炎の辻

一

炎の辻

一

叡山の騒擾はその後もつづいていた。院政の威光も、平家の権力も、山門の大衆だけには及ばない有様なのである。

天台千年の法城は、帝室や、国家からの破格な待遇に狎れて、仏徒は思い上がっていた。平家一門が、人臣の分を忘れて、

この世をば我が世とぞ思う――といったような思い上がりと同様に、仏徒もまた、仏弟子の分をわすれて、政治を持ち、武力をすら持って、社会を仏徒の社会と思い違えているかのように傲慢で、理窟ッぽくて、特権意識のみが旺だった。

(山門を討て)という声は、その前から北面の侍たちの間に起っていた輿論であった。新大納言や、浄憲法師や、鹿ヶ谷に集まった人々は、その政機を利用して、にわかに、山門討伐の院宣を名として、軍馬の令をくだした。

物の具を着けた武者たちは、夕方までに、数千騎、御所のまわりに集まった。武臣のうちでも、重要な数名の将のほかは、院宣のとおりに思って、叡山を攻めるのだとばかり思っていたらしい。

「今宵こそ、山法師ばらに、一泡ふかせてくれねば――」と、弓弦を試し、太刀の革を巻いて、夜を待っていた。

だが、院の中枢部の人々の肚は、敵は叡山にはなくて、六波羅にあった。