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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

十

範宴はすずやかにいって退けた。ことばの底には、人を打つ熱があった。彼は、僧の禁慾がいかに苦しいものか、自分にとって尊いものか、現在の自分に比べても余りに分りすぎている。彼は、師の弁護をするという気持よりも、いつか自分の行の深刻な苦悩に対して、思わず涙を流していっているのであった。

十

弥陀は、人間になし難いことを強いた。五戒の約束がそれである。

求法の僧衆が、最も苦しみ闘うのは、そのうちでも「女色禁」の一戒であった。女に対して、眼をつぶることは、生れながらの盲人でさえもなし難い。

肉体の意慾を、押しふせ、押しふせ、ある年月までの行を加えてしまうまでは、たいがいな僧門の若者は、この一戒だけにも、やぶれてしまう。

しかも、この至難な行をのりこえて、聖とか、高僧とかいわれるほどの人は、そのほとんどが、ふつうの人以上に、絶倫な体力や精根の持ち主であるので、その行のくるしいことも、人以上なものである。それはちょうど、一刻、一日ごとに、血まみれな心になって磨いてゆく珠玉にひとしい。磨けば磨いてゆくほど愛着のたかまるかわりに、ひとたび手から落してしまえば、十年の行も、二十年の結晶も、みじんに砕けて、その人の求法生活は、跡かたもないものになる。