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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

そして、御堂の庭には、敷砂まで撒いてあった。

「いッ、いやがったなッ」吠えたける一声がしたかと思うと、平次郎は、お吉の影を見つけて、タタタタタと躍り上がって、駈けてきた。

「――あッ、あれっ」

「うるせえっ」二十幾間かある廻廊を、お吉は黒髪をながして逃げまわり、夜叉の手斧はあくまでそれを追いつめにかかった。

五

――もうだめだ。お吉はそう観念した。

全身が、死をおもうて硬ばってしまった。妙に、走る意力もくじけて、

(御仏さま……お上人さま)とのみ心で叫んでいた。――と彼女は眼の先に、深い死の谷間を見た。ちょうど――御堂の廻廊の曲り角であった――お吉は欄干の角へ仆れるように手をかけた。

「ざまを見ろッ」

だっ――と躍ってきて、後ろから振りかざしてきた平次郎の手斧は、彼女の肩骨から頸へかけて、柱でもけずるように、ぴゅッ、とななめな光を描いた。

「――きゃッ!」これが――彼女が良人へ残して行った悲愴な終りの一声であった。それと共に、彼女のからだは、欄干からのめり落ちて、御堂の真下へもんどり打った。

ずうん――とその闇の下に、不気味な地ひびきを聞くと、

「斬ッたっ」平次郎は青白い笑みをゆがめて、さけんだ。