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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

日野の学舎を出て、ぐわらぐわらと、夕霜の白い草原を走らせてきた。

車のうちでは、簾をあげて、書を読む声が聞える。往きと、帰りと、十八公麿は、書を読んでいた。もう、星が白く、地は暗かった。それでも、寒風に顔を出して、書を手から離さないのであった。

「あっ……」牛飼は、立ち竦んだ。

行くてに当って、大きな炎が、真っ赤に、大地を焦いていた。この風であるし、萱原であるし、まるで、油をそそがれたように火はまわる。

「牛飼」

「へい」

「横へ曲がれ。少し、遠くはあるが、道はあろう」介は、煙に咽せながらいった。

車は、すこし戻って、石ころの多い萱原の小道を西へ駈けた。するとまた、

「駄目だっ」

「なぜ」問うまでもない、介の眼にも、すぐわかった。そこら一面も、焼けているのだ、後へ戻ると、そこにも火、あちらにも火、車は、みるまに十方の炎につつまれて、立ち往生してしまった。

「わはははは」

「あはははは」どこかで、嗤う声がした。

真っ黒な煙を、天から、たたきつけてくる。十八公麿は、車の中で、しきりと、咳声をして苦しがっていた。

「さては、成田兵衛の小せがれだな」介は、もう許せないというように、太刀の柄をにぎって、笑い声のした萱の波へ躍って行った。