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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

その往来を、向う見ずに、駈けて行った男がある。介であった。

「待てっ」と、京極の辻でさけんだ。

先へ走ってゆく影も、これまた、おそろしく迅っこい。ちらと、近くで見たところでは、それは、河原や枯れ野などによく寝ている物乞いか、菰僧の類であるらしかった。

初めは、てっきり、成田の郎党と見て追いかけてきた介は、いよいよ、狼狽した。

十八公麿さまを誘拐かして、遠国へでも売ろうとする野盗か人買いにちがいあるまい、と今度は考えた。

「待てツ、待てッ」叫べば、叫ぶほど、先の男は、背中に十八公麿を負っているにかかわらず魔のように迅くなる。

そして、どう抜けてきたか、六条のお牛場へと駈けこんだ。

「おおここだ」男は、築地を見上げて、佇んだ。そして裏門をどんどんと叩く。

誰か、開けた。開けると同時に、男は、背に負ってきた十八公麿を、抛りこむように、門の中へ渡して、さっさと、元の道へ、引っ回した。

「この乞食めっ、和子さまを、どこへやった」いきなり組みついてきたのは介である。

「あっ」よろめいたが、男は、何もいわなかった。身をねじって、介の体を、勢よく振りとばした。

介は、男の足をつかんだ。