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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

生ける菩薩のようだといって、慾も得もなく、彫ったのである。そして、彫りあがると、

(よい勉強をいたしました)と、坐像は礼に置いて行ったのであるという。

「ははあ……」箭四は、見恍れて、

「そういわれれば、生きうつしでござりますな。して、黒髪は」

「和子さまが、得度の時の黒髪を、そっくり、仏師たちが、植えこんでくれたのじゃ」

「道理で……。ウウム、ようできている」

「箭四よ」

「はい」

「これを、お養父君と、弟の朝麿とに、十八公麿のかたみじゃと申して、そなたが、負うて帰ってくれぬか」

「なによりの儀にござります。これを、お館にお置き遊ばしたら、すこしは、おさびしさが、紛れましょうに」

「もう、二度と、この身にない相じゃ。――御恩のほどは、この像に、たましいをこめて、朝夕に、忘れずにおりますと、よう、お伝え申しての」

「しおらしいことを仰せあそばす……」箭四郎は、それから、少し話していたが、日が暮れると、近ごろは気味がわるいといって、あわてて、坐像を帯で背に負って、もどって行った。そして、山門まで送ってくる二人へ、

「ここにいては、町のことは、見も、お聞きも、遊ばしますまいが、いやもう、この夏の旱やら、木曾勢を討つつもりで出かけた宗盛卿が、さんざんに敗れて、都へ逃げもどって来るやらで、京は、ひどい騒ぎの渦でござります」