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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

……おまえも」

「…………」箭四郎は、顔を俯伏せたまま、降る雪を、背につもらせて、泣いていた。

「参ろうぞ」慈円は弟子僧たちを、うながして、先へあゆみ出した。範宴はあわてて、

「さようなら」

「おさらば」と、日野民部が去った。

「和子さま」箭四郎は、立ち上がって、もいちど大きく呼んだが、声は、風と雪に攫われて、宙にふかれてしまった。

――後ろも見ずに、範宴は、先へゆく師の房と弟子たちの後を追って走ってゆくのであった。幾たびか、雪にまろんで。

そして、叡山口へかかって行く。

山にかかると、山はなおひどかった。師の慈円をはじめ弟子僧たちは、誰からともなく、経文を口に誦して、それが、音吐高々と、雪と闘いながら踏みのぼってゆくのであった。

範宴も、口の裡で真似て、経を誦した。はじめのうちは、声も出なかったが、いつのまにか、われを忘れていた。

辷っても、ころんでも、傍の者は、彼をたすけなかった。性善坊ですら、手をとって、起してはやらないのである。それが、師の慈悲であった、弟子僧たちの友情なのであった。

「――誰か知る、千丈の雪」慈円は、つぶやいた。

「おつかれになりませんか」