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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

慈円も、関白も、この兄弟は共に和歌の道に長けている。ことに、僧門にあって貴人の血と才分にゆたかな慈円の歌は、当代の名手といわれて、その道の人々から尊敬に値するものという評であった。

座主は、使いを返すと、そこを立って、中堂の表書院へ出て行った。

居間へ呼ばれるなら常のことであるが、表の間に待てとは、何事であろうかと、範宴は、ひろい大書院の中ほどに、小さい法体を、畏まらせて、待っていた。

「近う」と、慈円はいう。

畏る畏る、範宴は、前に出る。

そのすがたを、慈円は、眼の中へ入れてしまいたいように、微笑で見て、

「入壇のことも、まず、済んだの」

「はい」

「うれしいか」

「わかりません」

「苦しいか」

「いいえ」

「無か」

「有です」

「では、どういう気がする」

「この山へ、初めて、生れ出たような……」

「む。……しかし、入壇の戒を授けたからには、おもともすでに、一個の僧として、一山の大徳や碩学と、伍して行かねばならぬ」

「はい……」

「白髪の僧も、十歳の童僧も、仏のおん目からながめれば、ひとしく、同じ御弟子であり、同じ迷路の人間である」

「はい……」

「わが身を、珠とするか、瓦とするか、修行はこれからじゃ。