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しんらん
親鸞
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁
自身が、こっちへ来ることも、迫ることもできないだけに、何とかして、明るい中に立っている二人を、自身の牢の前まで引きつけようとして、必死なのであった。声に、魔魅の力すら覚えるのだった。
じっと、遠くから見ていた性善坊は、牢の口に、顔を押しつけている獣のような眸を見て、思わず、
「あっ! ……」と、驚きの声を放った。範宴も、思いだして、
「おお」牢の前へ、走って行こうとするので、性善坊は、袂をとらえて止めた。
「お師さま。寄ってはなりません! 寄ってはなりません!」
「なぜ、なぜ?」範宴は、その袂を、振りもぎろうとさえするのであった。
「その中にいるのは、悪魔です。悪魔のそばへ、寄っては、お身のためにならないからです」
「悪魔? ……」と、範宴は、牢にかがやいている二つの鋭い眸を見直して、
「悪魔ではない。あれは、日野の学舎で、わしと机をならべていた寿童丸じゃ」
「いいえ。……それには違いありませんが、今では、西塔の堂衆で、朱王房という悪魔です。その側に立っている高札をごらんなさい」と、性善坊は、指さしていった。
――この者、元坂本の中間僧たりし所、西塔の学僧寮に堂衆として取りたてられ、朱王房と称しおる者なり。