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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

「ごらんなさい」と性善坊は、五条の橋に立って、指さした。

「――あの空地の草原で、子供たちや、牛が遊んでおりましょう。あれは、小松殿のお館のあった薔薇園の跡でございます。また、右手の東詰には、平相国清盛どのの、西八条の館があったのですが、荒れ果てている態を見ると、今は、誰の武者溜りになっておりますことやら」

「変ったのう」しみじみと、範宴はいって、ふと、橋の欄から見下ろすと、そこを行く加茂の水ばかりは、淙々として変りがない。

いや、水にも刻々の変化はあるが、人間のような儚い空骸や相を止めないだけのことである。西八条や薔薇園の女房たちの脂粉をながした川水に、今では、京洛に満ちる源氏の輩が、鉄漿の溶き水や、兵馬の汚水を流しているのである。

「変れば変るもの――」いつまで立っていても飽かない心地がするのだった、無限の真理と直面しているように――。そして、生ける経典を眼のあたりに見ているように。

儚いと見ればただ儚い。進歩とみれば進歩。また、虚無とみれば虚無――

社会はあまりに大きすぎて、人生の真がつかみ難い。

そこらを往来する物売りや、工匠や、侍や、雑多な市人は、ただ、今日から明日への生活に、短い希望をつないで、あくせくと、足を迅めているに過ぎないのだった。