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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

(やはり法門こそ自分たちの安住の地だ)という心地がした。

かたく閉じられてある門の外に立って、性善坊は、

「おたのみ申す」と、ほとほと叩いた。

範宴は、うしろに立って、錆びた山門の屋根だの、楼の様だの、そこから枝をのばしている松の木ぶりだのを眺めて、

「十年……」なつかしげに眼を閉じて、十年前の、自分の幼い姿を瞼に描いていた。ぎいと、小門が開いて、

「どなたじゃの」番僧の声がした。

「無動寺の範宴にござりますが、このたび、奈良の法隆寺へ遊学のため、下山いたしましたので、僧正の君に、よそながらお目にかかって参りとう存じて、夜中ですが、立ち寄りました。お取次ぎをねがわしゅう存じまする」

「お待ちください」しばらくすると、番僧がふたたび顔をだして、

「どうぞ」と、先に立って案内した。

慈円僧正は、その後、座主の任を辞して、叡山からまたもとの青蓮院へもどって、いたって心やすい私生活のうちに、茶だの和歌だのに毎日を楽しんでくらしているのだった。

清楚な小屋に、二人を迎えて、慈円は、心からよろこんだ。

「大きゅうなったのう」まず、そういうのだった。得度をうけた時の小さい稚子僧の時のすがたと、十九歳の今の範宴とを思い比べれば、まったく、そういう声が出るのだった。