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しんらん
親鸞
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁
「――治承四年」とつぶやいた。
「わしはまだ幼かった。おもとはよく覚えておろう」
「宇治の戦でございますか」
「されば、源三位頼政殿の討死せられたのは、この辺りではないか」
「確か。……月は、五月のころでした」
「わしには、母の君が亡逝られた年であった。……母は源家の娘であったゆえ、草ふかく、住む良人には、貞節な妻であり、子には、おやさしい母性でおわした以外、何ものでもなかったが、とかく、源氏の衆と、何か、謀叛気でもあったかのように、一族どもは、平家から睨まれていたらしい。さだめし、子らの知らぬご苦労もなされたであろう」
「いろいろな取り沙汰が、そのころは、ご両親様を取り巻いたものでございました」
「さあれ、十年と経てば、この水のように、淙々と、すべては泡沫の跡形もない。――平家の、源氏のと、憎しみおうた人々の戦の跡には何もない」
「ただ、秋草が、河原に咲いています。――三位殿は、老花を咲かせました」範宴は、法衣の袂から数珠を取りだして、指にかけた。
高倉の宮の御謀議むなしく、うかばれない武士たちの亡魂が、秋のかぜの暗い空を、啾々と駈けているかと、性善坊は背を寒くした。