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しんらん
親鸞
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁
いるのだった。
「大丈夫じゃ」父みずからが、こう、折紙をつけていた。
けれど――やがて、翌年になった。まる一年の誕生日がくる。かぞえ年では、二歳になったのだ。夏もすぎ、秋にもなった。
ところが、それにもかかわらず、十八公麿はまだ、ものらしい言を唇からもらしたことがない。
乳母は、ようやく不安らしい眉をひそめて、侍従介へ、
「和子さまは、やはり、唖でいらっしゃるかもしれません」そっと、洩らしたというし、父の有範も、
「よいわ、五体さえ、そろうていれば」と、かなしい諦めをもちかけて、妻に気を落させまいとした。誰ともなく、出入りする雑人のあいだにも、
「日野のお館に生れた嬰児は、唖子じゃそうな」と、噂された。
母性の人には、それが、冷たく聞えた。彼女もまた、そう信じて、
「なんの因果」と、悲しみ沈んだが、子のない不幸をなげいて、如意輪観世音に、
(どうぞ、夫婦に子を)と、祈願をこめたことを忘れて、授かった珠に、わずかな、瑕があったからというて、不平をいうのは慾のふかさというものであると思った。
ことには、自分の血液というものも考えだされた。源家の戦人である祖先たちは、どれほど、この世に修羅を作ったかしれない。