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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

「あははは」

「わははは」

「世の中が、明るくなった」

「出かけようか」銭をおいて、二人は、ひょろひょろ出て行った。

さっきから黙って聞いていた山伏の顔には、なんともいえない不快な色が漲っていたが、ふと、後ろ姿へ、憤怒の眼を射向けると、ついと起ち上がって、外へ出た。

黒はまだ、木皿に残っている飯や揚物を、ぺろぺろと長い舌で貪っていた。

「黒っ」口笛を鳴らして、山伏は走った。そして先へいい機嫌で歩いてゆく二人の法師の影へ向って、しっと、ケシかけたのである。

わん、わん! 獰猛な声をあげて、黒はもう一人の法師の脛へいきなり咬みついていたのである。

「あ痛っ」

「畜生」その狼狽ぶりを目がけて、山伏は、杖を振り上げながら、

「外道っ」と、喚いた。

二人が、道ばたへ仆れたのを見ると、黒と山伏は、後も見ずに、闇へ紛れてしまった。

四

一枚の蓆を、山伏は、河原へ敷いた。四条大橋裏が、蛇腹のように大きく闇へ架かって、屋根になっている。

「寝ろ」黒の首っ玉をかかえ込んで、山伏は、自分も眠ろうと努めた。

しかし、寝つかれそうもなかった。枕元に近く瀬の水音がしているからではない。橋の上を、時折、馬や人が通るからでもない――山伏のこめかみには青い筋がふくれていた。