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しんらん
親鸞
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁
で、召使たちは、よけいに心を傷めて、病室にこの過失を知らすまいと努めたのであったが、ひとつ館のうちの出来事ではあるし、そこへ呼ばれてきた侍女の素振りにも不審が見えたので、母である彼女が覚らないはずはなかった。
「十八公麿のすがたが見えぬとて、そう、噪ぎたてることはない」侍女のことばを窘めて、彼女は、静かに良人の枕元を離れた。彼女もまた、それを知るとすぐ、病人の心づかいを惧れたからであった。廊下へ出て、
「まさか、築地をこえて、館の外へ走り出はすまい。池の中の渡殿を見てか?」
「はい、あそこも、探したようでございます」
「池の亀を、面白がって、よう汀で遊んでいることもあるが、よも、水へ落ちたような様子はないでしょうね」
「そんなことは……」侍女も、落着かない、そして自信のないことばつきで、答えるのである。
「穿物を、だしてください」沈着に、静かなことばで、そういうのであったが、さすがに心のうちでは胸が痛いほど案じられているらしい。廊下の階に立って、侍女が、穿物をもってくるまも、もどかしげにその眉が見えた。すると、
「姉君、どちらへ?」前栽の木蔭から、誰か、そういって、近づいてくる者が見える。