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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

心蓮はここを出て行ったのである。

――それが、忽然と、またこの門へ帰ってきたというのだ。

人々は、法然が、それに対してなんというであろうかと、推し測るように顔を見ていた。――と、法然は、

「通しなさい」そういってから、すぐ、

「疲れておるようであったら、休ませて、粥など与え、その後でもよいぞよ」しかし、心蓮は、すぐ導かれてそこへ入ってきた。

「お……」なつかしい旧友。

久しく仰ぎ見ない師の房。

この柱、この天井、また庭の樹々――

心蓮は坐ると、瞼を赤くしてしまった。何かいおうとしたが手をつかえると、それなりしばらく黙ってしまった。

「心蓮か」

「はい……戻って参りました……。面目もございませぬ」

「よう戻ってこられた」

「穴にでも入りたい心地がいたしますが……。ほかに、心蓮の行く所はございませぬ。やはり、この吉水禅房のほかに、往生の床はないと、こんどはよく分って戻って参りました」

「よい修行をされたとみえる。この三年、お汝はどこにおられたぞよ」

「ずっと、都遠く離れて、笠置の山里のさる豪家の持っている山の中に、一庵を借りておりました。一日一度、食物を運んでもらうほか、人の顔も見ず、夜も昼も、念仏に送って、まったく世間の音から離れ、草が伸び、木の葉が散るのを見て、月日を知るような生活をしておりました」