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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

「この二、三日は、朝麿の泣き声が、ひどう、むずかるようだが……」

「ちと、虫気でございましょう」

「十八公麿は」

「あれにおりまする」

「まだ、起きているか」次の狭い室をのぞくと、なるほど、ほたる火のような淡暗い燈心を立てて、今年五歳になる十八公麿は、小机へ坐って、手習いをしていた。

「勉強か。えらい」賞めながら、立って行って、墨に濡れた草紙をのぞきこんだ。

「うーむ、以呂波歌か。……その手本は、誰がいたした」十八公麿は、ふりかえって、

「叔父さまに」と答えた。

「宗業が、そちのために、書いたのか。……これほどの仮名の名手は、探してもそう数はない。よい師を持っていて、お汝は、しあわせ者だ」

「お父様も、おうたを書いてくださいませ」

「書にかけては、宗業にはかなわぬ。わしは、今にお汝がもっと大きゅうなったら、和歌の道を教えよう。和歌は日本人の心の奏でじゃ。成人して、何になろうと、たしなみほどはあってもよい」

誰か、その時、渡殿の廊下を、みしみしと歩いてきた。

「――誰じゃ」

「箭四郎でございます」日野の家を移る時から従いてきた下僕は、この箭四郎と、若党の介だけであった。介は、先ごろ故郷にのこしてある老母の病があついという報らせで、田舎へ帰っていてこの二月ほどいなかった。