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しんらん
親鸞
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁
「闘います、百難と」
「兄は、他力門の弘通に北国へ。――弟のお身は、自力聖道門の山へ。こう二つの道は、西と東ほど違うようだが、辿り登れば、同じ弥陀の膝なのじゃ。……弥陀のお膝でまた会おうの」奥で――その時、なにをむずかり出したか、嬰児の房丸が泣きぬいていた。尋有は、ふと、そこから洩れる甘い母乳の香に、自分の幼いころを思いだした。
「――十六日のお時刻は」
「卯の刻に出立する」
「その朝の鐘は、尋有が撞きます。青蓮院の卯の刻の鐘が鳴りましたら、弟が、見えぬ所から見送っていると思うて下さいませ」といって、尋有はやがて、初更のころ、山づたいに忍んで帰って行った。
未明の光
一
ゆうべは、小松谷の小御堂には夜もすがら念仏の声が揚っていた、念仏をおくびにいっても、厳科に処すという禁令が出て以来、官の取締り方も民衆の自戒も、針のような神経質になっている折なのに。
十六日の暁方は、刻々と、小御堂をつつむ暗い樹々の風と、白い星のまたたきに、近づきつつあった。
法然は、宵のうちに、わずかの間を眠っただけで、まだ初更の鐘も鳴らないうちから起きていた。そして起きているまは、一秒一瞬のあいだも、念仏を怠らないのである。