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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

心のうちに住むとは、どういうものでございますな」

「今もろうた餅がござる、皆して、おやつにあれを食べ、ここで一休みしたがよい。わしも食べながらそれを語ろう」

もうこの国も青葉の六月だった。梅雨を越えると急に暑くなって、草も木も一日に何寸ずつ伸びるのかと思われる。

春――魔火の禍いにかかった国府の役所は、もう前の丘に、新しい壁と建物とを見せている。再建築は、意外に早かった。うわさに聞けば代官の萩原年景は、あれ以来、帯も解かず焼け跡に立って、大工や左官たちを督励し、またたくうちに先に役所のほうを建て直し、焼け失った書類を再調したり、領内の政治一新に心がけて、

(すこし、あのお代官、このごろ変だぞ)といわれるほど、以前とはまるで態度がちがってきたということであった。

「上人様、今日は、皆さま一人のこらず、托鉢でござりますか」

「そうと見える。皆いないようじゃ」

「さだめし、ご不自由でございましょうな、お一人では」

「なんの……不自由と考えたこともない。親鸞の心はいつも、自由無碍でござるゆえな」

「そうじゃ、今の、人間は家のうちに住むのでなく、心のうちに住むものだというお話をうかがわせてくださいませ」