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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

見ると、故少納言信西の息子、浄憲法師という、才子で、人あたりがよくて、そして院のうちの切れ者といわるる人物だった。

時々、歌の詠草などを届けてよこして、評を求めるので、そのつど、歌はみてやるけれど、範綱とは、べつな世界に生きている人間であって、いくら永く知ってはいても、ほんとの知己にはなれないでいる男だった。

にやりと、浄憲は寄ってきた。何ということもなく、欄へ誘って丸柱に、背をもたせながら、

「何か、御内奏でもあって、御伺候かの?」と、そろりと探りを入れる。

「いや、相かわらず、歌よみは、歌よりほかにはお相手のしようものうて……」範綱も、そっと、逃げると、浄憲はねちねちとした眼で、ぶしつけな正視を相手へ与えながら、

「ほ……。それにしては、だいぶ、お永い話であったの」

「きょうは、御興にいったとみえて――」

「歌の話に、お人ばらいまでせらるるとは、ご入念なことだ」

「…………」

「ときに」と浄憲は、すり寄ってきた。そして、範綱の耳のそばで、

「新大納言の君から、なんぞ、そこもとにも、耳うちがあったはずだが……」

八

「ゆうべの使者から、あらましのことは、お聞き取りと思うが――」