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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁
「一陽来復。おまえにも時節が来たらしいね。劉備や……心の支度もよいかえ」
と、かえって静かに声を低め、劉備の覚悟を糺すようにいった。
時節。……そうだ。
長い長い冬を経て、桃園の花もようやく蕾を破っている。土からも草の芽、木々の枝からも緑の芽、生命のあるもので、萌え出ない物はなに一つない。
がたん……
ことん……
蓆機は単調な音をくりかえしているが、劉備の胸は単調でない。こんな春らしい春をおぼえたことはない。
――我は青年なり。
空へ向って言いたいような気持である。いやいや、老いたる母の肩にさえ、どこからか舞ってきた桃花の一片が、紅く点じているではないか。
すると、どこかで、歌う者があった。十二、三歳の少女の声だった。
妾ガ髪初メテ額ヲ覆ウ
花ヲ折ッテ門前ニ戯レ
郎ハ竹馬ニ騎シテ来リ
床ヲ繞ッテ青梅ヲ弄ス
劉備は、耳を澄ました。
少女の美音は、近づいてきた。
……十四君ノ婦ト為ッテ
羞顔未ダ嘗テ開カズ
十五初メテ眉を展ベ
願ワクバ塵ト灰トヲ共ニセン
常ニ抱柱ノ信ヲ存シ
豈上ランヤ望夫台
十六君遠クヘ行ク
近所に住む少女であった。早熟な彼女はまだ青い棗みたいに小粒であったが、劉備の家のすぐ墻隣の息子に恋しているらしく、星の晩だの、人気ない折の真昼などうかがっては、墻の外へきて、よく歌をうたっていた。