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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

二

督郵も、ちぢみ上がって、

「なんじゃ、待て、乱暴なことをするな」

と、ふるえ声で、逃げかけるのを、張飛はとびかかって、

「どこへ行く」

軽く一つ撲ったが、督郵は顎でもはずしたように、ぐわっと、歯をむいたままふん反った。

「じたばたするな」

張飛は、その体を軽々と横に引っ抱えると、また疾風のように外へ出て行った。

二

門外へ出てくると、

「犬にでも喰われろ」

と、張飛は、引っ抱えてきた督郵のからだを、大地へたたきつけて罵った。

「汝のような腐敗した佞吏がいるから、天下が乱れるのだ。乱賊は打つも、佞吏を懲らす者はない。人のなし得ぬ正義をなし、人の抗し得ぬ権力に抗す。それを旗幟とする義軍の張飛を知らずや。やいっ」

督郵の顔を踏んづけて、張飛がいうと、督郵は、手足をばたばたさせて、

「者どもっ。この狼藉を。――この乱暴者を、搦め捕れ。誰かいないか」

悲鳴に似た声でわめいた。

「やかましい」

髻をつかんで引廻した上、張飛は、門前の巨きな柳の樹に目をつけて、

「そうだ、見せしめのために」

と、督郵の両手を有りあう縄で縛りあげ、その縄尻を柳の枝に投げて、吊しあげた。

柳から生った人間のように、督郵の足は宙に浮いた。