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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

五

「君!」と、陳宮を呼びとめ、

「君はしばらく此処で待っていてくれないか」

と云い残し、何思ったか、再び道を引っ返して馳けて行った。

「どこへ行ったのだろう?」と、陳宮は、彼の心を解きかねて、怪しみながら待っていたところ、やがてのこと曹操はまた戻ってきて、いかにも心残りを除いて来たように、

「これでいい! さあ行こう。君、今のも殺って来たよ。一突きに刺し殺してきた」

と、いった。

「えっ。呂伯奢を?」

「うん」

「なんで、無益な殺生をした上にもまた、あんな善人を殺したのです」

「だって、彼が帰って、自分の妻子や雇人が、皆ごろしになったのを知れば、いくら善人でも、われわれを恨むだろう」

「それは是非もありますまい」

「県吏へ訴え出られたら、この曹操の一大事だ。背に腹はかえられん」

「でも、罪なき者を殺すのは、人道に反くではありませんか」

「否」

曹操は、詩でも吟じるように、大声でいった。

「我をして、天下の人に反かしむるとも、天下の人をして、我に反かしむるを休めよ――だ。さあ行こう。先へ急ごう!」

五

――怖るべき人だ。

曹操の一言を聞いて、陳宮はふかく彼の人となりを考え直した。