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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

五

噛み、馬は疲れるとも、馬上の戦いは疲れて止むことを知らなかった。

あまりの目ざましさに、両軍の将兵は、

「あれよ、張飛が」

「あれよ、呂布が――」

と、しばし陣をひらいて見とれていたが、呂布の勢いは、戦えば戦うほど、精悍の気を加えた。それに反して、張飛の蛇矛は、やや乱れ気味と見えたので、遥かに眺めていた曹操、袁紹をはじめ十八ヵ国の諸侯も、今は、内心あやぶむかのような顔色を呈していたが、折しも、突風のようにそこへ馳けつけて行った二騎の味方がある。

一方は、関羽だった。

「義弟、怯むな」

と、加勢にかかれば、また一方の側から、

「われは劉備玄徳なり、呂布とやらいう敵の勇士よ、そこ動くな」

と、名乗りかけ、乗り寄せて、玄徳は左右の手に大小の二剣をひらめかし、関羽は八十二斤の青龍刀に気をこめて、義兄弟三人三方から、呂布をつつんで必死の風を巻いた。

五

いくら呂布でも、今はのがれる術はあるまい。たちまち、斬って落されるだろう。

そう見えたが、

「なにをっ」

と、猛風一吼して、

「束になって来い」

と呂布はまだ嘲笑う余裕さえあった。関羽、張飛、玄徳の三名を物ともせず、右に当り左に薙ぎ、閃々の光、鏘々の響き、十州の戦野の耳目は、今やここに集められたの観があった。