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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

六

――はや敵も間近、時おくれては、この本陣も蹂躙されん。是非の軍法は後にして執り行えばよし。――関羽。関羽。この酒をひと息のんで、すぐ駆け向え。はや戦え」

曹操が、酒をついで与えると、関羽は、杯を眺めただけで、再拝しながら、

「ありがたい御意ですが、そこにお預かりおき下さい。ひと走り行って、華雄の首を引ッさげ帰り、お後で頂戴いたしますから」

と、八十二斤と称する大青龍刀を横ざまに擁し、そこにあった一頭の馬をひきよせ、ぱっと腰を鞍上へ移すや否、漆黒の髯は面から二つに分かれて風を起し、たちまち戦塵のなかへ姿を没してしまった。

六

関羽の揮う青龍刀の向うところ、万丈の血けむりと、碧血の虹が走った。

はるかに、味方の陣を捨て、むらがる敵軍の中へ馳け入るなり、

「華雄やある。敵将華雄はいずれにあるぞ。わが雄姿に恐れをなして潜んだるか。出合えっ」

と、呼ばわった。猛虎が羊の群れを追うように、数万の敵は浪打って散った。

喊の声は、天地をつつみ、鼓声はみだれ、山川もうごくかと思われた。

此方――敗色にみなぎっていた味方の本陣では、彼の働きに、一縷ののぞみをかけて、

「戦況いかに?」