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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

四

関羽、張飛のふたりは、こもごも、玄徳に云った。

「お出でになるつもりですか」

「行こうと思う、折角の好意を無にしては悪いから」

「なにが好意なものか。呂布の肚の底には、この徐州を奪おうとする下心が見える、断ってしまったほうがいいでしょう」

「いや、わしはどこまでも、誠実をもって人に接してゆきたい」

「その誠実の通じる相手ならいいでしょうが」

「通じる通じないは人さまざまで是非もない。わたしはただわしの真心に奉じるのみだ」

玄徳は、車の用意を命じた。

関羽、張飛も、ぜひなく供について、呂布の客舎へのぞんだ。――もちろん、呂布は非常な歓びで、下へもおかない歓待ぶりである。

「何ぶん、旅先の身とて、充分な支度もできませんが」と、断って、直ちに、後堂の宴席へ移ったが、日ごろ質素な玄徳の眼には、豪奢驚くばかりだった。

宴がすすむと、呂布は、自分の夫人だという女性を呼んで、

「おちかづきをねがえ」

と、玄徳に紹介わせた。

夫人は、嬋娟たる美女であった。客を再拝して、楚々と、良人のかたわらに戻った。

呂布はまた、機嫌に乗じてこういった。

「不幸、山東を流寓して、それがし逆境の身に、世間の軽薄さを、こんどはよく味わったが、昨日今日は、実に愉快でたまらない。