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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

四

「嘘のような……」と、茫然たる面を見あわせたまま、しばしいうことばを知らなかった。

玄徳はやがて、

「実は、盧植将軍は、自分の旧師にあたるお人なので、ぜひともひと目、お別れをお告げ申したいが、なんとか許してもらえまいか」と切に頼んだ。

四

「ははあ。では、罪人盧植は、貴公の旧師にあたる者か。それは定めし、ひと目でも会いたかろうな」

守護の隊将は、玄徳の切な願いを、肯くともなく、肯かぬともなく、すこぶるあいまいに口を濁して、「許してもよいが、公の役目のてまえもあるしな」と、意味ありげに呟いた。

関羽は、玄徳の袖をひいて、彼は賄賂を求めているにちがいない。貧しい軍費ではあるが、幾分かをさいて、彼に与えるしかありますまいといった。

張飛は、それを小耳にはさむと、怪しからぬことである。そんなことをしては癖になる。もしきかなければ、武力に訴えて、盧将軍の檻車へ迫り、ご対面なさるがよい。自分が引受けて、警固の奴らは近寄せぬからといったが、玄徳は、

「いやいや、かりそめにも、朝廷の旗を奉じている兵や役人へ向って、さような暴行はなすべきでない。といって、師弟の情、このまま盧将軍と相見ずに別れるにも忍びないから――」