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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁
五
……するとあつかましい左豊は、我に賄賂をあたえよと、自分の口から求めてきたが、陣中にある金銀は、みなこれ官の公金にして、兵器戦備の費えにする物、ほかに私財とてはなし。ことに、軍中なれば、吏に贈る財物など、何であろうかと、わしはまた、真っ正直に断った」
「……なるほど」
「すると、左豊は、盧植はわれを恥かしめたりと、ひどく恨んで帰ったそうだが、間もなく、身に覚えない罪名のもとに、軍職を褫奪されてこんな浅ましい姿をさらして、都へ差立てられる身とはなってしもうた。……今思えば、わしもあまり一徹であったが、洛陽の顕官どもが、私利私腹のみ肥やして、君も思わず、民をかえりみず、ただ一身の栄利に汲々としておる状は、想像のほかだ。実に嘆かわしい。こんなことでは、後漢の霊帝の御世も、おそらく長くはあるまい。……ああどうなりゆく世の中やら」
と、盧植は、身の不幸を悲しむよりも、さすがに、より以上、上下乱脈の世相の果てを、痛哭するのであった。
五
慰めようにも慰めることばもなく、鉄格子をへだてた盧植の手を握りしめて、玄徳も共にただ悲嘆の涙にくれていたが、
「いや先生、ご胸中はお察しいたしますが、いかに世が末になっても、罪なき者が罰せられて、悪人や奸吏がほしいままに、栄耀を全うすることはありません。