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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁
三
相府への出仕も、休んだり遅く出たり、夜は酒に酔い、昼は狂躁に罵ったり、また、終日、茫然とふさぎ込んだまま、口もきかない日もあった。
「どうしたんですか」
妻が問えば、
「うるさい」としかいわない。
床を踏み鳴らして、檻の猛獣のように、部屋の中を独り廻っている時など、頬を涙にぬらしていることがあった。
そうこうする間に、一月余りは過ぎて、悩ましい後園の春色も衰え、浅翠の樹々に、初夏の陽が、日ましに暑さを加えてきた。
「お勤めはともかく、この際、お見舞にも出ないでは、大恩のある太師へ叛く者と、人からも疑われましょう」
彼の妻はしきりと諫めた。
近頃、董太師が、重いというほどでもないが、病床にあるというので、たびたび、出仕をすすめるのだった。
呂布もふと、
「そうだ。出仕もせず、お見舞にも出なくては、申し訳ない」
気を持ち直したらしく、久しぶりで、相府へ出向いた。
そして、董卓の病床を見舞うと、董卓は、もとより、彼の武勇を愛して、ほとんど養子のように思っている呂布のことであるから、いつか、叱って追い返したようなことは、もう忘れている顔で、
「オオ、呂布か、そちも近頃は、体が勝れないで休んでいるということではないか。