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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

二

「ここでは、人目にかかっていけません。後から直ぐに参りますから、園のずっと奥の鳳儀亭で待っていてください」

「きっと来るだろうな」

「なんで嘘をいいましょう」

「よし、では鳳儀亭に行って待っているぞ」

呂布はひらりと庭へ身を移していた。そして、木の間を走るかと思うと、後園の奥まった所にある一閣へ来て、貂蝉を待っていた。

貂蝉は彼が去ると、いそいそと化粧をこらし、ただ一人で忍びやかに、鳳儀亭の方へ忍んで行った。

柳は緑に、花は紅に、人なき秘園は、熟れた春の香いにむれていた。

貂蝉は、柳の糸のあいだから、そっと鳳儀亭のあたりを見まわした。

呂布は、戟を立てて、そこの曲欄にたたずんでいた。

二

曲欄の下は、蓮池だった。

鳳儀亭へ渡る朱の橋に、貂蝉の姿が近づいて来た。花を分け柳を払って現れた月宮の仙女かと怪しまれるほど、その粧いは麗わしかった。

「呂布さま」

「おう……」

ふたりは亭の壁の陰へ倚った。そして長いあいだ無言のままでいた。呂布は、体じゅうの血が燃えるかと思った。うつつの身か、夢の身かを疑っていた。

「……おや、貂蝉、どうしたのだね」

「…………」

「ええ、貂蝉」