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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

五

五

袁紹は、股を打って嘆声を発した。

「ああ、惜しいかな。こんなことになるならば、わが臣下の、顔良と文醜の二大将をつれて来るのだったに」

席を立って、地だんだを踏んだり、また席に返って、嗟嘆をつづけた。

「その顔良、文醜の両名は、後詰めの人数を催すために、わざと、国もとへのこして来てしまったが、もしそのうちの一人でもここにいたら敵の華雄を打つことは、手のうちにあったものを! ……」

と、一座は黙然。

袁紹の叱咤ばかり高かった。

「ここには、国々の諸侯もかくおりながら、その臣下に、華雄を討つほどの大将一人持っていないとあっては、天下のあざけりではあるまいか。後代までの恥辱ではあるまいか」

とはいえ、総帥の彼自身が、すでに及ばぬ悔いばかり呶鳴って、焦躁に駆られているので、満座の諸侯とて言葉もなく、皆さしうつ向いているばかりだった。

すると、その沈痛を破って、

「ここに人なしとは誰かいう。それがし願わくば、命ぜられん。またたく間に、華雄が首をとって、諸侯の台下に献じ奉らん」と、叫んだ者があった。

諸人、驚いて、

「誰か」

と、階下を見ると、その人、身の丈は長幹の松の如く、髯の長さ剣把に到り、臥蚕の眉、丹鳳の眼、さながら天来の戦鬼が、忽として地に降りたかと疑われた。