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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

二

「こんどはいつここで会おう」

「この秋」

玄徳がいう。二人はうなずいて、

「ではあなたはこれから※(「さんずい+(冢-冖)」、第3水準1-86-80)県の母御のもとへおいでになるつもりですか」

「うム。ご無事なお顔だけ拝したら、またすぐ風雲の裡へ帰ってくる。涼秋の八月、再び三人して、五台山の月を見よう」

「おさらば」

「気をつけて」

「お互いに」

三名は三方の道へ、しばし別離の姿をかえりみ合った。

二

関羽と張飛のふたりに別れてから、玄徳は姿を土民のふうに変えて、ただ一人、故郷の県楼桑村へ、そっと帰って行った。

「ああ、桑の木も変らずにある……」

何年ぶりかで、わが家の門を見た玄徳は、そこに立つと一番先に、例の巨きな桑の大樹を、懐かしげに見上げていた。

――かたん。

――ことん、かたん。

すると蓆を織る機の音が家の裏のほうで聞えた。玄徳は、はっと心を打たれた。ここ両三年は馬上に長槍をとって、忘れはてていたが、幼少から衣食してきた生業の莚織の機は、今なお、この故郷の家では休んでいなかった。

その機を、その筬を、今も十年一日のごとく動かしている者は誰だろうか。

問うまでもない、玄徳の母であった。