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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

世の常の甘い母親のように、息子の友達だからといって、やたらに小腰をかがめたりチヤホヤはしなかった。

「劉備からおはなしは聞きました。失礼ですが、お見うけ申すからに頼もしい偉丈夫。どうか、柔弱なわたしの一子を、これから叱咤して下さい。おたがいに鞭撻し合って、大事をなしとげて下さい」と、いった。

「はっ」

張飛は、自然どうしても、頭を下げずにはいられなかった。長上に対する礼儀のみからではなかった。

「母公。安心して下さい。きっと男児の素志をつらぬいて見せます。――けれどここに、遺憾なことが一つ起りました。で、実はご子息に相談に来たわけですが」

「では、男同士のはなし、わたくしは部屋へ行っていましょう。ゆるりとおはなしなさい」

母は、奥へかくれた。

張飛は、その後の床几へ腰かけて、実は――と、自分の盟友、いや義兄とも仰いでいる、雲長のことを話しだした。

雲長も、自分が見込んだ漢で、何事も打明け合っている仲なので、早速、ゆうべ訪れて、仔細を話したところ、意外にも、彼は少しも歓んでくれない。

のみならず、景帝の裔孫などとは、むしろ怪しむべき者だ。そんな路傍のまやかし者と、大事を語るなどは、もってのほかであると叱られた。