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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁
馬は甘をかえりみて、
「ほんとにないのかもしれねえな。あまり落着いていやがる」
すると老僧は、曲にかけていた枯木のような肘を上げて、後ろの祭壇や、壁や四方をいちいちさして、
「ない! ない! ない! ……仏陀の像さえない! 一物もここにはないっ」と、いった。
泣くがような声である。
そしてにぶい眸に、怨みの光をこめてまたいった。
「みんな、お前方の仲間が持って行ってしまったのだ。蝗の群れが通ったあとの田みたいだよここは……」
「でも、何かあるだろう。何か喰える物が」
「ない」
「じゃあ、冷たい水でも汲んでこい」
「井戸には、毒が投げこんである。飲めば死ぬ」
「誰がそんなことをした」
「それも、黄巾をつけたお前方の仲間だ。前の地頭と戦った時、残党が隠れぬようにと、みな毒を投げこんで行った」
「しからば、泉があるだろう。あんな美麗な蓮花が咲いている池があるのだから、どこぞに、冷水が湧いているにちがいない」
「――あの蓮花が、なんで美しかろう。わしの眼には、紅蓮も白蓮も、無数の民の幽魂に見えてならない。一花、一花呪い、恨み、哭き戦きふるえているような」
「こいつめが、妙な世まい言を……」