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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

殺して来い」と、いいつけた。

「承知しました」

李儒はもとより暴獣の爪のような男だ。情けもあらばこそ、すぐ十人ばかりの屈強な兵を連れて、永安宮へ馳せつけた。

「どこにおるか、王は」

彼はずかずか楼上へ登って行った。折ふし弘農王と何太后とは、楼の上で春の憂いに沈んでおられ、突然、李儒のすがたを見たのでぎょっとした容子だった。

李儒は笑って、

「なにもびっくりなさる事はありません。この春日を慰め奉れ、と相国から酒をお贈り申しにきたのです。これは延寿酒といって、百歳の齢を延ぶる美酒です。さあ一盞おあがりなさい」

携えてきた一壺の酒を取り出して杯を強いると、廃帝は、眉をひそめて、

「それは毒酒であろう」と、涙をたたえた。

太后も顔を振って、

「相国がわたし達へ、延寿酒を贈られるわけはない。李儒、これが毒酒でないなら、そなたがまず先に飲んでお見せなさい」といった。

李儒は、眼を怒らして、

「なに、飲まぬと。――それならば、この二品をお受けなさるか」

と、練絹の縄と短刀とを、突きつけた。

「……おお。我に死ねとか」

「いずれでも好きなほうを選ぶがよい」

李儒は冷然と毒づいた。