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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

そして呂伯奢は、いそいそと、

「まあ、ごゆるりなさい、てまえは隣村まで行って、酒を買って来ますから」

と、驢に乗って出て行った。

曹操と陳宮は、旅装を解いて、一室で休息していたが、主はなかなか帰ってこない。

そのうちに、夜も初更の頃、どこかで異様な物音がする。耳をすましていると、刀でも磨ぐような鈍い響きが、壁を越えてくるのだった。

「はてな?」

曹操は、疑いの目を光らし、扉を排して、また耳をそばだてていたが、

「そうだ、……やはり刀を磨ぐ音だ。さては、主の呂伯奢は、隣村へ酒を買いに行くなどといって出て行ったが、県吏に密訴して、おれ達を縛らせ、朝廷の恩賞にあずかろうという気かも知れん」

呟いていると、暗い厨のほうで四、五名の男女の者が口々に――縛れとか、殺せとか――云いかわしているのが、曹操の耳へ、明らかに聞えてきた。

「さてこそ、われわれを、一室に閉じこめて、危害を加えんとする計にうたがいなし。――その分なれば、こっちから斬ッてかかれ」

と、陳宮へも、事の急を告げて、にわかにそこを飛び出し、驚く家族や召使い八名までを、またたく間にみな殺しに斬ってしまった。