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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁
やはり幾らかあわてていたんだな」
「…………」
陳宮には、それに返辞する勇気もなかった。
馬を隠して、しばらくの後、またそこへ戻って来てみると、曹操は、古廟の軒下に、月の光を浴びていかにも快よげに熟睡していた。
「……なんという大胆不敵な人だろう」
陳宮は、その寝顔を、つくづくと見入りながら、憎みもしたり、感心もした。
憎むほうの心は、
(自分は、この人物を買いかぶった。この人こそ、真に憂国の大忠臣だと考えたのだ。ところがなんぞ計らん、狼虎にひとしい大野心家に過ぎない)
と、思い、また敬服するほうの半面では、
(――しかし、野心家であろうと姦雄であろうと、とにかく大胆さと、情熱と、おれを買いかぶらせた程の弁舌とは、非凡なものだ。やはり一方の英傑にちがいないなあ……)
と、ひとり心のうちで思うのであった。
そして、そう二つに観られる自分の心に質して、陳宮は、
「今ならば、睡っている間に、この曹操を刺し殺してしまうこともできるのだ。生かしておいたら、こういう姦雄は、後に必ず天下に禍いするだろう。……そうだ、天に代って、今刺してしまったほうがいい」と、考えた。
陳宮は、剣を抜いた。