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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

「動くな。近づけろ」

呂布は、味方を制しながら、落着き払っていたが、やがて敵味方、百歩の間に近づいたと見るや、

「それっ、みな殺しにしてしまえ」

と号令一下、呂布自身も、またがれる赤兎馬に鉄鞭一打ちくれて、むらがる河内兵の中へ突入して行った。

「わッしょっ」

呂布の懸け声だ。

画桿の方天戟を、馬上から右に左に。

「えおオッ! ……」

と振るたびに、敵兵の首、手足、胴など血けむりといっしょに、吹き飛んでゆくかと見えた。

「やあ、口ほどもないぞ、寄手の奴輩、呂布これにあり。呂布に当らんとする者はないのか」

傲語を放ちながら、縦横無尽な疾駆ぶりであった。

無人の境を行くが如しとは、まさに、彼の姿だった。何百という雑兵が波を打ってその前をさえぎっても、鎧袖一触にも値しないのである。

馬は無双の名馬赤兎。その迅さ、強靱さ、逞しさ。赤兎の蹄に踏みつぶされる兵だけでも、何十か何百か知れなかった。

洛陽童子でも、それは唄にまで謡っている――

牧場に駒は多けれど

馬中の一は

赤兎馬よ

洛陽人は多けれど

勇士の一は

呂布奉先

従って、かねて聞く五原郡の呂布を討ち取った者こそ、こんどの大戦第一の勲功となろうとは――寄手もひとしく思い目がけているところだった。